【株式】事例研究(失敗例①) テクニカル分析でDelta-Fly Pharma(4598)のトレードを振り返る

【株式】事例研究(失敗例①) テクニカル分析でDelta-Fly Pharma(4598)のトレードを振り返る

はじめに

先日、Delta-Fly Pharma(デルタフライファーマ:銘柄コード4598)を損切りしました。2019年7月に100株を2052円で買い付け、2020年2月に1360円で売却。7か月の保有で72550円の損失となりました。損失率は実に35%!

こんなことをやっていては株式での資産形成など夢のまた夢です。

自分のこれまでの株式トレードの傾向を振り返ると、確固たるルールに基づいてトレードを行っているわけではなく、「何となく」買いたい・売ったほうが良さそうだ、という勘に頼ったトレードになっていたような気がしています。

もっとも、個人投資家が上場株式へ投資するにあたって勘を用いることは、絶対にやってはいけないことだとは必ずしも思いません。

個人投資家には投資先企業のファンダメンタルズを綿密に調べるスキルも時間も不足しているのが通常なので、ここぞという勘が働いたときに勇気を持って買いに入ることは必要だと思います。

また、入口もさることながら、出口戦略はもっと大切なのですが、私の場合、こちらがかなり曖昧だったということに今さらながら気が付きました。

そこでこれを機に、本棚に眠っていた「テクニカル分析入門」(田中勝博 著/日経文庫/2005年)を引っ張り出し、今回の失敗の原因について分析することにしました。当時テレビ東京で歯切れのよいマーケット解説をしてくれていた「フィスコの田中さん」ですが、既に泉下の人となっているようで遅ればせながらかなり驚きました。

Delta-Fly Pharmaのテクニカル分析

これまでの出口行動を思い出してみると、上昇トレンドを形成していると思われる銘柄を順張りで買って十分に利益が出ている時は、週足チャートで見てここがトレンドの転換点かな~と「何となく」感じたところで利益を確定していました。これは比較的上手くいったケースですが、やはりここも「何となく」です。これは主に米国株に投資した時にこのような行動になることが多かったと思います。

また、私は日本株については、少額の資金で短期間で値幅を取りたいとの虫のいい考えが頭をもたげるためか、今回のDelta-Fly Pharmaのような小型株に投資したくなります。買付を実行するにあたっての自分の思考は、恥ずかしながら「値ごろ感」を最も重要視していたような気がします。

TradingView提供のチャート

上の株価チャートは「TradingView」(トレーディングビュー)というツールを使用して描画しています。

Delta-Fly Pharmaは「モジュール創薬」という手法で抗がん剤開発を目指しているいわゆる創薬ベンチャー企業で、本社は徳島市です。

「モジュール創薬」は斬新であり、是非とも手掛ける事業が実を結んでほしいなと思っていますが、2019年および2020年3月期は事業収益がない状況で、ファンダメンタルズから考えると投資対象とはなりません。しかし、将来の期待に基づく値動きが非常に大きく、今回つい食指が伸びてしまいました。

改めてチャートを眺めると、3000円近辺の高値からのきつい下落局面から、やや反発の兆しを見せたところですぐに買いに入ってしまっています。下落トレンドが継続している中では、いくら価格が移動平均線を上回ったからと言っても買いに入るべきではありませんでしたが、後悔先に立たずです。

ここで、「テクニカル分析入門」を紐解きます。

以下、書籍からの引用です。

・・・下げている銘柄を、これまでのトレンド(流れ)に逆らい買うという投資行動があります。これを逆張りと呼んでいます。もちろん、上昇している銘柄を売りとする行為も同じです。

この投資行動は、もっとも危険な行為と考えています。

下げている銘柄を、心理的な割安感だけで買うという行為は、「自分自身は神である」と思い込んでいる投資家以外は、絶対に「してはならない」行動と考えています。

トレンドの転換には、相当な材料とエネルギーが必要となります。

下落トレンドが上昇トレンドに変わると予想するのは勝手ではありますが、高値から30%以上下げたから、テクニカル的な割安感が強いから…という理由だけで、相場に入ることは絶対に止めてください。

運良く、「火中の栗」を拾い、大儲けした経験をお持ちかもしれません。しかし、たまたま「運が良かった」だけとお考えください。

トレンドに乗ることを順張りと言います。トレンドに乗ってこそ、儲けることができるのです。・・・

(引用ここまで)

以前読んだときにはしっかりとマーカーを引いていた箇所なのに、すっかり忘れてまさに「してはならない」行動をしていました。

してしまったものは仕方がないので、今後の教訓とするために、まずはテクニカル分析の基本中の基本である「移動平均」を用いた分析を試みます。これは、株価の平均値とパターン(グランビルの法則)で、相場の流れを読もうとする手法です。

グランビルの法則

移動平均線の読み方は、アメリカの著名なチャート分析家、ジョセフ・E・グランビルの投資法則が基本になっています。

この法則は、移動平均線と価格の位置関係に注目したもので、売・買のシグナルをそれぞれ4つのパターンにまとめています。

買いポイント

 

  1. 移動平均線が下降を続けた後に、横ばい、もしくは上向きかけている状態で価格が移動平均線を上回った場合
  2. 移動平均線が上昇している時に、価格が移動平均線を下回った場合
  3. 価格が上昇基調の移動平均線の上にあり、移動平均線に向かって下降してきたが、移動平均線を割り込むことなく再度上昇に転じた場合
  4. 価格が下降しつつある移動平均線から、相場が大きくかけ離れて下落した場合(短期的自律反発)

売りポイント

  1. 移動平均線が長期上昇の後で横ばい、もしくは下降を開始した状態で、価格が移動平均線を下回った場合
  2. 移動平均線が下降している時に、価格が移動平均線を上回った場合
  3. 価格が下降基調の移動平均線の下にあり、移動平均に向かって上昇してきたが、移動平均線を通り抜けることなく再度下降に転じた場合
  4. 価格が上昇しつつある移動平均線から、相場が大きくかけ離れて上昇した場合(短期的修正)

移動平均の留意点

以下の文章も書籍からの引用をもとに構成されています。

・・・移動平均線では、1本の線と株価の乖離で相場の方向性を占うほかに、2本の異なる期間の線を使い相場の方向を読む方法があります。

短期線が長期線を下から上に突き抜けるのを「ゴールデンクロス」、上から下に突き抜けるのを「デッドクロス」といいます。

「ゴールデンクロス」は買いサイン、「デッドクロス」は売りサインとなります。

移動平均という手法では、ゴールデンクロスが相場に入るチャンス、デッドクロスが出るチャンスと解釈することが出来ます。

また、移動平均では、入るチャンスと出るチャンスを「セット」で利用していたのでは、利益が出ないことが知られています。

ゴールデンクロスがチャートに現れるのは、相場が相当上昇してからとなりますし、デッドクロスも相場が相当下落してから観測されることが多いです。

相場に入るタイミングとして移動平均線のゴールデンクロスを利用した場合、出るタイミングはデッドクロスではありません。

その他様々な分析手法を駆使して、デッドクロスが観測される前に相場から逃げなければ、大きな利益は期待出来ないのです。…

(ここまで)

分析結果

以上の分析から気づいたことは、自分の今回の買いタイミングは、グランビルの法則では図表3の売りポイント2に該当しているということです。

TradingView提供のチャート

見事なまでに間違っていますね・・・。

また、移動平均線で観測される買いポイントと売りポイントを併用した場合、確かに利幅がとても狭そうです。

ですので、次は移動平均との組み合わせの手法として「ロウソク足からの天底シグナル」について研究してみたいと思っています。

(おわり)

参考文献

「テクニカル分析入門」(田中勝博 著/日経文庫/2005年)